全シ連の「響」に連載中の話題をお知らせしてきましたが、「青空」の楽器関連ではどうも一段落したようで、あるいはこのブログでの紹介が最後になるかも知れない今回の記事の執筆者は、濱田さんです。
[9] マンドリン (Mn)
マンドリンは日本人にもなじみの深い楽器です。その美しくもはかなげな独特の音色は古くから多くの人を惹きつけてきました。
比較的短期間で習得できるので愛好者も多い楽器ですが、本格的に取り組んでみると奥の深い楽器でもあります。
日本においては、初めて紹介されてから100年以上ものあいだ、マンドリンの音色は多くの人々に愛されてきました。かつて詩人・萩原朔太郎(マンドリン奏者)をして「日本趣味」と言わしめたその音色は、後に古賀政男により昭和初期歌謡曲に取り入れられ、着実に日本の風土に根付きました。
現在、学生や社会人のマンドリン合奏グループは、東京都内だけでも軽く100以上を数え、日本全国いたるところで演奏されています。マンドリンの生まれ故郷イタリアや、マンドリンの盛んなドイツと比較しても、圧倒的な演奏人口を誇る日本は、世界的な「マンドリン大国」です。
トレモロ奏法
マンドリンというと、小刻みに連続して弾く「トレモロ」という奏法が特徴的です。この奏法が一般的に使われるようになったのは19世紀末からです。ヴィヴァルディの時代(バロック期)にはトレモロ奏法はありませんでした。
美しいトレモロは、聴く人の心を奪うことがしばしばあります。ビブラートのような効果がありますし、持続音のイメージもあります。
このトレモロ奏法を極めるには、日々の練習を欠かせません。最初のうちはみんなここから一生懸命練習を始めるのですが、次第にしなくなるようです。
お手本は人により地域により異なります。速い人・遅い人、ピックの持ち方、手首を「への字」にして捻るように動かす関東式、手首は固定し肘を動かす関西式、手首を「逆ヘの字」にしてクネクネ動かすイタリア式など。
どれが正しいかはともかく、野球やゴルフのスィングのように常にフォームチェックが必要な技術で、稽古を怠ると次第に遅くなっていきます。
滑らかなトレモロを極め、維持するのは簡単ではありません。
ただ右手をダラダラと同じように動かしているだけの遅すぎるトレモロは持続音に聞こえません。
逆に速すぎると、せわしない感じになり、マンドリンならではの心を揺さぶるトレモロの魅力を失います。
速すぎるトレモロは大合奏では大きな問題となります。30人のオーケストラだと1パート6人位になりますが、例えば塗り絵の空白(2分音符とか)を6人がかりで塗り潰すようなものです。
個人のバラつきも作用して、その空白はくまなく塗り潰されてしまう。もはやトレモロの筆致は見えません(聴こえません)。
大合奏ではマンドリンの魅力の大部分が犠牲になっている気がします。
マンドリン大国の日本において、一般世間に対しマンドリンの素晴らしさをアピールできていないのが現状です。
シニアアンサンブルでのマンドリン
シニアアンサンブル向けに編曲されたMn譜は 2nd Vn譜の流用が多く、総じて低いポジションでの演奏です。それではこの楽器の魅力を十分に引き出せているとは思えません。楽器の特性を生かした編曲を望みたいところです。
マンドリンならではの可憐な音が合奏に加われば、シニアの演奏はさらに身近になることでしょう。
シニア各団体のマンドリン奏者は少人数ですから、まさにソリストのような存在です。キレのあるピッキングや聴く人の心を揺さぶるトレモロで、マンドリンの魅力を大いにアピールできたら、きっとやってみたい人がたくさん生まれます。
マンドリンは高齢から始めても、比較的短期間で楽しめるようになる楽器ですから。
はまだ文宏(マンドリン奏者・成田SE)
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