私達の仲間には「キーボード」の担当者が重要なパートを受け持っている場合が多いようです。「キーボード」という呼称は直訳すると「鍵盤」ということで、楽器の分野では広くはピアノ、オルガン、電子オルガン、アコーディオン等も入りますが、私達は通常、一段鍵盤のデジタルキーボードを呼称しています。
今回はデジタルキーボードに縁が最も深いオルガンについて話しを進めます。
★パイプオルガン★
●ヨーロッパではオルガンは「パイプオルガン」を呼称します。一種の笛であるオルガン管に空気を送りこんで発音させます。
2~3段の手鍵盤や足鍵盤を備え、壁面や床に固定させます。ヨーロッパでは教会、日本ではホールに多く見られますが、管が林のように立ち並ぶので、建物の建築と同時に設置される場合が多いようです。制作は受注生産で、各々設計が異なるので、納期が1~2年ぐらいかかるようです。日本ではNHKやサントリーホールのオルガンが有名ですが、メーカーはドイツ、オランダなどが多く、費用は5億円ぐらいと言われています。
●その歴史は古く、古代ギリシアではヒュトラウリスと呼ばれていました。中世(5世紀ごろ)に入り教会の聖歌の伴奏として用いられましたが、ルネッサンス時代より、オルガン音楽が急速に発達し、バッハやパッフェルベルのような、オルガニスがトッカータやフーガを演奏するようになりました。その後は衰退しましたが19世紀後半より20世紀に入りフランクやメシアンによって新しい音楽が作曲されています。但し正系はキリスト教会にあります。
★リードオルガン★
●パイプを用いずに金属リードを発音源とするオルガンで私達には大変なじみ深いオルガンですが、今は電子時代、完全に過去のものになりました。ヨーロッパの産業革命による金属の加工技術発達により1820~30年頃よりアコーディオン、ハーモニカなどリード楽器が出現しますが、この時期に開発され価格も安価なため教会や学校、一般家庭で普及されました。話しは余談になりますが、明治20年に浜松の小学校で使用されたこのオルガンを修理する業者がいなかったので、浜松の医療機器修理工に依頼され、その職人がオルガンの構造をよく研究し、自分で作り始めたのが、ヤマハの原点になっています。
職人名は山葉寅楠と言い日本の洋楽器製造の第一号です。
★電子オルガン★
●西欧音楽はその文明の発達と共に、楽器も開発され衰退していますが、20世紀の文明により作り出された楽器の代表的なものは「電子オルガン」「シンセサイザー」「エレキギター」があげられます。電子オルガンは電気的に音を発振しスピーカーで発音されますが、今日のものになるまでに数多のモデルチェンジがくりかえされました。
●電子オルガンの発端は戦前よりアメリカのローリー、ワーリツァー、ハモンドという3社が開発、発売したものです。音源が真空管のため楽器が重く高価であったため教会用や一部の専門プレーヤー以外には殆ど使用されませんでした。昭和30年に入り半導体が開発され、真空管より軽量、コンパクトになり一挙に長足の進歩をとげます。
●これらのエレクトロニクスを、いち早く活用し、モデルチェンジを迅速化し音楽教室で普及し、量産によってコストダウンを図り、世界市場をリードしたのが日本のメーカーです。半導体のコンパクト化によって一台の電子オルガンに色々な機能を搭載できるようになり、一人の奏者によって管弦打楽器を全て演奏できるまでに高度化されましたが、その方向は人々には必ずしも歓迎されないようです。やはり一人で全てを演奏するということよりも、すばらしい音楽、感動あふれる音楽そのものを求めているのだと思います。
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